封水とは、トイレや洗濯機、シンク、洗面台などの排水管に設置される排水トラップ内に貯留させておく水の事です。
封水は排水管をS字状などに曲げて排水管内に水が留まる仕組みを設け、イメージ的には水で形成された栓で害虫や配管を通じて室内に侵入していくる臭気やガスを遮断する役割があります。
封水深とは、排水トラップの封水の深さのことです。
封水深は深くなるほど異臭を防止する効果が高まりますが、封水深が深くなるほど排水管トラップに異物や髪の毛などが溜まりやすくなり排水管が詰まりやすくなります。
逆に封水深が浅い場合は、排水管の詰まりや汚泥物の滞留は減少しますが排水切れを起こしやすくなるという特徴があります。
その為、封水深は深すぎても浅すぎても問題を生じる可能性があると言えます。
尚、一般的な理想の封水深は50~100mm程度の深さが理想的な範囲であるとされております。
排水トラップ内の水がなくなることを「封水切れ」または「破封」と呼びます。
封水切れをおこすと、配管から臭気が室内に侵入し異臭を放つようになります。
もし、現在既に排水管から悪臭が上がってきている状態にある場合は、封水切れの可能性をまず検討する必要があります。
封水切れを起こす原因には幾つかのケースがありますので、まず原因を把握し対策を行う手順となります。
排水管トラップの封水は、水分ですから時間とともに僅かずつではありますが蒸発して封水量が減少していきます。
特に夏場の蒸発量は多くなる為、長期的に水を流していない場合は封水切れを起こす可能性が高くなります。
住宅室内やシンクまわり、洗濯機置き場、洗面台、トイレなど既に悪臭が発生している場合は、とりあえず排水パイプに水を流し込んでみて臭気の強さを確認してみましょう。
例えば長期間家を留守にしていた場合や、水をほとんど利用していない設備がある場合は流水を流し、更にやや多めの水を排水口にコップなどで静かに流し込んでおきます。
封水切れの原因が蒸発による原因である場合は、トラップに水を補充するだけで臭気がだいぶ改善されるケースが多くあります。
臭いの変化を感じるのは1日程度の時間がかかりますが、水を補充することで明らかに悪臭が改善された場合は封水切れが原因であると判断して良いでしょう。
但し、封水切れをおこす原因は蒸発だけでなく他の原因も関与している可能性があります。
一時的に臭気が改善されても、数日後すぐに悪臭が発生するようであれば他の原因を検討し、状況に見合う対処法を実践していくことが大切です。
自己サイホン作用とは、洗面器の水を大量に一気に流した際に、排水管側に封水が引き寄せられて封水切れを起こす現象のことです。
排水管へ流れ込む水の勢いが大きいほど自己サイホン作用を生じやすいため、水を補充する際は静かに水を流し込む必要があります。
自己サイホン作用の対策は、基本的には前述したようにまず応急処置的に排水に水を補充することです。
但し、これは根本的な解決とならない為、例えば洗面所の場合は洗面器の底面の勾配が緩やかな製品を使い排水口へ流入する水の勢いを弱くする対策方法があります。
施設や集合住宅、大規模マンションなどの場合は上階の住人が大量に水を排出すると、排水管内の空気圧が変化し封水が破られ封水切れが起こるケースもあります。
排水管内の空気圧が高くなると、室内の洗面器側に水が跳ね出て封水が破壊され、配管内の空気圧が低くなると下の階層に繋がる排水管側に吸い込まれて封水が破壊されます。
トイレの便器の排水トラップの水が一気に減少してしまった場合などは、上層階の排水の影響を受けて排水管内の圧力に変化が生じ封水切れを起こしている可能性もあります。
トイレの場合は悪臭も強くなるため、早期対策を実施することが大切です。
跳ね出し作用・吸込み作用の対策方法の基本は空気圧を安定させることです。
その為、排水トラップ内の空気圧を安定させるために通気管が最初からついているPトラップ、Uトラップに交換するのもひとつの方法です。
通気管が設けてある排水トラップへ交換する場合は、装置が設置できる洗面台下の収納スペースの確認が重要です。
また交換の際は専用の器具が必要となるため、自分で交換を行う際は事前に道具の準備を整えておくことが大切になります。
毛管現象作用とは、毛髪や糸くずなどが排水管内に引っかかり、糸くずなどが水を吸い上げながら封水切れをおこしてしまう現象のことです。
浴室や洗濯機、そして洗面台ではどうしても髪の毛や糸くずが排水口に流れやすくなるため、数年単位の時間をかけて蓄積し毛管現象を発症するケースもあるため、原因の究明が難しいのがこのケースです。
排水口への異物の侵入を防止するためには、排水口専用ネットなどの製品を利用することが有効です。
洗面台や浴槽の排水口は口が小さいためネットタイプの製品は使用できませんが、近年は排水口の経口に合わせたスポンジタイプの詰まり止なども製品化されておりますので設置を検討してみると良いでしょう。