【建築設備はかせ】クリーンルームのケミカルフィルター設置

建築設備はかせ

◆ケミカルフィルター・掃除機・無塵衣の解説

◆ケミカルフィルターとは?

ケミカルフィルターとは、いったいどのようなフィルターなのでしょうか?

このケミカルフィルターは、建築資材や壁紙、更には従来のエアフィルターなどから発生する可能性を持つ、空気中にごくわずかに流れ出てくる分子状汚染物質を除去する為に開発された高性能のクリーンフィルターです。

半導体製造工場などでは、高いクラスのクリーン度が求められる為、現在ではこのケミカルフィルターは不可欠な存在ともなりつつあります。

塵や埃といったマイクロ単位以下の分子レベルの空気汚染に対しても有効に働きます。

◆高額になるランニングコスト問題

半導体製造施設ではクリーンルームの基準が厳しく定められております。

その為、ケミカルフィルターの設置は不可欠であることは確かです。

しかし、ケミカルフィルターにはひとつの問題があります。

それはやはり高性能であるがゆえのコストの問題です。

ケミカルフィルターは大変高額なフィルタであり交換が必要となる消耗品でもあるため「ランニングコスト」が大きく膨らむ要因ともなりかねません。

※ケミカルフィルター=ランニングコストが高い

また、定期的な交換はもちろんのこと、メンテナンス費用も当然必要となってきます。

その為、設置の際のポイントとしては、確実に除去が求められる部分は積極的に使用し、通常のエアフィルターと併せてケミカルフィルターの併用を検討することです。

設置に関しては、まずAMC発生原因となる健材などの確認や測定チェックを行い必要となる部分に対しケミカルフィルターを設置することが大切です。

ランニングコストは工場が稼動する限り発生する電気代などと変わらないコストです。

建材の変更などを行うと一時的に設備投資費用が大きく負担となるかもしれませんが、長期的なランニングコストも考えると有効な設備投資となるケースもあるのですね。

◆高額になるランニングコスト問題

ランニングコストが負担となるケミカルフィルター。

しかし近年では交換不要のユニット型の「ケミカルフィルターユニットシステム」なども製品化されております。

ユニット型のシステムはメンテナンスが容易です。

また、フィルターそのものの交換費用もかからないことから、ランニングコストが大幅に削減され経費節約の流れもあってか積極的に導入する企業が増加しております。

但し、やはりユニット型の場合はランニンコストは軽減できたとしても「初期導入費用」がかさみます。

※ユニットシステム=設備投資費用はかさむがランニングコストは軽減される

当たり前の話ではありますが、設備投資は長期的視野で行うものです。

法廷耐用年数などの問題も考慮して行うのが基本。

導入企業が増えているということはやはりそれなりのメリットが期待されていることの証です。

そのひとつに性能はもちろんのこと、ランニングコストという問題も大きく関与しております。

今後のケミカルフィルタの設置に関しては、長期的視野をもってこれらのユニット型システムの導入も併せて検討することがポイントとなってくるでしょう。

◆AMCとは?

建築・設備設計を行う際にクリーンルームの設計において幾つかの問題点が確認されております。

その中でも大きく問題として上がって取り上げられている建築素材となる物質にAMCと呼ばれる物質があります。

ここではまず「AMCとは何か?」という点について見ていきましょう。

◆AMCが及ぼす半導体製造施設への影響

AMCとは、Airborne Molecular Contaminationの頭文字の略称のことで、「分子状汚染物質」の事を指します。

このAMCは、クリーンルームそのものを構成する建築素材である
●コンクリート
●塗料
●電線・ケーブル
●シール材
などの他、流入する外気や半導体製造課程で発生する可能性を持つガス状の汚染物質です。

クリーンルームの清浄度をどれだけ厳しく管理したとしてもクリーンルームに使用されている建築資材を変える事はなかなかできることではありません。

その為AMCの対策には莫大なコストが必要となるケースもあります。

非常に精密な製品である半導体などの製造施設においては、これらのAMCの発生が製造に影響を与えている事が既に幾つかのケースで確認されているのです。

◆半導体製造施設におけるクリーンルーム規定

建築資材から発生するAMCの問題はクリーンルームの設計に大きく影響を与えました。

クリーンルームを構成する建築資材から発生するAMCは主に「アウトガス」と呼ばれており、アウトガスの対策で最も有効とされる方法は、建築段階でアウトガスの発生が少ない建築資材を選択する事が求められるためです。

AMCを発生させる要因となる物質は前述したように建材の他、塗料や接着剤、シール材など広範囲に渡る為、AMCの測定を行う場合はこれらの試験体を1つずつ測定していく事になります。

【AMCの主な測定項目】
★酸性ガス測定 ⇒ 二酸化硫黄等
★凝縮性有機物質測定 ⇒ 沸点が約50度を超える有機物質
★塩基性ガス測定 ⇒ 塩基性層のガス状物質(アンモニア等)
★ドーパント測定 ⇒ 半導体製造で使用するドープ剤(ホウ素・リン等)

しかし、近年になりAMCと合わせて更に大きな問題が取り上げられるようにもなりました。それはクリーンルーム内に設置されるフィルターの問題です。

クリーンルームでは粉塵などを除去する為にエアフィルターを設置します。

しかし、何とこのエアフィルター本体からもAMCが発生していることが確認されたのです。

その為、半導体製造施設においてはAMCを発生しにくい内装材を使用する規定などの他、AMCを除去する性能をもつ「ケミカルフィルター」の使用などが求められることになったのです。

半導体製造施設におけるクリーンルーム規定
★AMCを発生しにくい内装材の使用
★ケミカルフィルターの使用

◆掃除機・集塵機はどのようなものを選ぶと良いか?

クリーンルームは清潔であることが第一条件です。

 細菌レベルのゴミを逃さず収集し、作業で発生する小さなゴミなども毎日の清掃で徹底管理することが求められることは言うまでもありません。

このクリーンルームの清掃に関しては当然一般的な掃除機などを使用することはできません。

これは吸引の際に排出される排気から微量の粉塵が撒き散らされる可能性があるためです。

その為、クリーンルームの清掃では業務用の中でもクリーンルーム専用の業務用掃除機が使用されます。

◆排気がクリーンであること

クリーンルーム専用の業務用掃除機を見たことがある方はご存知かと思いますが、専用掃除機は見た目が若干ゴツゴツしております。

実際に工場で見かけた掃除機は昔のダルマストーブを連想させる縦長の若干大きな掃除機(体育館の掃除機に似ています)と肩にかけながら作業員が掃除が可能なハンディータイプの掃除機。

どちらも日常生活ではあまり見かけませんね。

クリーンルームで使用される掃除機の最大の特徴は排気がクリーンに保たれる点です。

排気に大きな影響を与えるのはもちろんフィルターです。

掃除機のフィルターに関しても、ナノ単位の集塵性能をもつフィルターが使われます。

◆チタンフィルター(ナノ触媒のフィルター)

フィルターの性能はどんどん向上しております。

近年話題となっているフィルターはナノ単位レベルの集塵をもキャッチするナノ触媒のフィルターなどがあります。

また、更に細かい臭いの元となる分子をキャッチするチタン製ナノ光触媒も開発されております。

チタン触媒は、フィルターでキャッチした臭いの元となる分子をフィルター上で分解除去する優れものです。

※ナノチタン光触媒=臭いの分子を分解

尚、このチタンとはゴルフクラブなどで使用されているチタンと同様。

この他にもケミカルフィルターの項で紹介したフィルターなど様々なフィルターが開発されております。

◆業務用掃除機を選ぶ際のポイント

業務用掃除機を選ぶ際のポイントは、高レベルのクリーン度を保つフィルターが装着できる製品であること。

これは第一条件ですが、これをクリアできない専用掃除機はおそらくありません。

ですから、フィルター自体のランニングコストを計算するようにしましょう。

同一レベルの除去レベルを誇るフィルターであれば大手製品ではなくとも専用メーカーのフィルターの方がランニングコストが安価に納まることもあります。

次いで抑えておきたいポイントは、毎日使用する製品であるという点です。

クリーンルームの清掃は毎日行われます。

毎日使うものである以上使い勝手が良い掃除機を選択することも重要なポイントです。

小さいから機能が低い?ということはもちろんありません。

一昔前の大きな掃除機よりも、現在の小型掃除機の方が数倍性能が優れているものも多くありますね。

クリーンルーム用の掃除機はメーカーも限られてくるので
★フィルター性能・ランニングコスト
★扱いやすさ
をチェックした上で価格を検討していくのが良いでしょう。

◆室内の無塵衣(服装・衣服)

クリーンルーム室内で着用する衣服については幾つかの制限事項があります。

工場などの施設内をイメージしてみるとわかりますが、クリーンルーム指定区域内の作業員は皆、病院で見かける白衣に似た衣服を着用していることに気づきます。

白衣は視覚的に清潔感を与える効果がありますが、この作業用の白衣は清潔感もあるかもしれませんが、それ以上に室内のクリーン度を保つことができる服装であることが求めらるのです。

工場内で作業をする方は毎日の作業で使用する作業着でもありますから定期的なクリーニングも重要です。

このようにクリーンルーム内で着用する衣服は「無塵衣」と呼びます。

※クリーンルーム内では無塵衣を着用して作業を行う

◆無塵衣の特徴

クリーンルーム専用の無塵衣の最大の特徴は制電加工が施されている点です。

※無塵衣は制電加工が施されている

摩擦などあらゆる状況で発現する静電気は「ホコリ」「塵」を寄せ付ける要因ともなります。

また毎日使用する衣服ですから汚れに強い素材で作られる必要があります。

その為、一般的に肌に優しいとされる「綿」などの素材がわずかでも配合されることはまずありません。

一般的に工場設備や無菌室などで使用される着衣はポリエステル100%のものとなります。

※ポリエステル100%が主流

アトピー性皮膚炎などで肌が弱くお悩みの方の場合は、この無塵衣によって症状が悪化するケースもある点は見逃せません。

また自分用の無塵衣に刺繍で名前を入れる場合は注意が必要です。

その刺繍で使用される繊維がクリーン度に影響を与える繊維である可能性もある為です。

少し細かいように感じられますが、クリーンルームではこのように服装から手袋、フード、帽子、ネットキャップ、ブーツ、マスクに至るまで細かいチェックがなされます。

◆静電気による静電引力と放電

クリーンルームの無塵衣の多くは制電加工が施されております。

静電気は電気の帯電によって起こる自然現象です。

帯電した電気は、静電引力と呼ばれる物質分子を引き付ける作用をもたらすことが確認されております。

子供の頃、下敷きをこすって髪の毛にあてると、髪の毛が逆立つという遊びをしたことがある方もいるかもしれません。

これも静電気の帯電によって生じた「静電引力」の働きなのですね。

クリーンルームでは細かい部品を扱う工場施設が多くあります。

制電加工が施こされていない衣服を着用していると、小さな集塵を引き寄せ作業の際に、製品の部品となる基材などに埃をつけてしまう可能性があります。

また、帯電した電気は時に強い放電現象を発生することもあります。

友達の手に触れた瞬間に「パチっ!」と音がして一瞬ではあっても強い痛みを感じた事がある方も多いと思います。

これは静電気の「放電」が原因です。

火気厳禁の設備では、このような小さな静電気の放電から火災に至る可能性もゼロではありません。

制電加工は大切な加工技術のひとつなのですね。

◆対応クラスを確認しよう

無塵衣は製品別にクリーンルームの対応クラスのある程度の目安が記載されております。

★クラス100~クラス1000まで対応可能
★クラス10000対応

などの表記が必ず記載されているはずなので、設備のクラスに見合った衣服を着用することが望ましいとされています。

無塵衣は上下別々のタイプからつなぎタイプまで幅広い製品が製造されております。

カラーは「白」「青」(薄い水色系~薄い緑系)の2カラーが基本です。